カルテット好きな私が坂元裕二「ファーストキス」を鑑賞した感想と考察

人生ドラマ

心温まるタイムトラベル・ラブストーリー

先日、待ちに待った坂元裕二さん脚本の最新作「ファーストキス」を観てきました。松たか子さん主演・坂元裕二さん脚本のドラマ「カルテット」が大好きな私にとって、今回の作品も期待以上の素晴らしさでした!

余韻がさめないうちに感想を残したいと思います。

結末が読めない? 夫婦愛を描くタイムトラベル・ラブストーリー

「ファーストキス」は、突然夫を失った主人公・カンナが、15年前にタイムスリップして若き日の夫・駈(かける)と再び出会うという、切ないけれど温かい物語です。坂元さんらしい繊細な会話劇と、タイムトラベルという SF 要素が絶妙にミックスされていて、最後まで目が離せませんでした。

永遠に刻みたい、感動をあなたの手元に――。
数々の名作ドラマと映画を生み出してきた脚本家・坂元裕二が贈る、映画『ファーストキス 1ST KISS』(2月7日公開・東宝)のオリジナルシナリオブックが登場!胸に響くセリフの数々を完全収録し、感動を何度でも味わえます。また、主演・松たか子による特別な寄稿文も掲載しました。映画製作の裏側や坂元裕二への想いを綴った貴重な文章で、本書ならではの読み応えも満載です。さらに、巻頭にはカラー16ページの映画スチールも収録。スクリーンで感じる感動を本書でも体験してください。

二度と会うはずのなかった亡き夫、15年前のあなたに恋をする―
結婚して十五年目、事故で夫が死んだ。夫とは長く倦怠期で、不仲なままだった。残された妻は第二の人生を歩もうとしていた矢先、タイムトラベルする術を手に入れる。戻った過去には、彼女と出会う直前の夫の姿があった。出会った頃の若き日の夫を見て、彼女は思う。わたしはやっぱりこの人のことが好きだった。夫に再会した彼女はもう一度彼と恋に落ちる。そして思う。十五年後事故死してしまう彼を救わなくては– 。「夫婦とは?」「家族とは?」「愛する人と歩む人生とは?」人生で誰もが直面する、答えのない深くてシンプルな疑問。この物語は、それらの意味を問いかける心揺さぶるラブストーリー。



詳しいあらすじについては、公式HPなどを参照してもらえたらと思います。

観終わってまず思ったこと。
「あんなにやり直したのにハッピーエンドじゃないんだ。結局この結末になったのか・・・」という、やりきれない複雑な気持ちでした。でもやっぱりそれだけじゃなくて、繰り返したシーンを反芻してみるとやっぱり未来は変わった。或いはハッピーエンドともいえる物語なのかもしれない。


この映画の核心は、「運命は変えられるのか」というテーマだと思います。カンナは夫の死を回避しようと何度も過去に戻りますが、結局は同じ結末に至ってしまう。でも、その過程で二人の関係性が深まっていく。

これって、私たちの人生にも通じるメッセージがあるよねと。「結婚生活の15年間が、カンナの努力によって輝きを取り戻した。無駄じゃなかった。」とも感じました。過去は変えられなくても、今この瞬間の選択で未来は変えられる。そんな希望を感じさせてくれる作品でした。

映画「ファーストキス」キャラクターの魅力

  • 硯カンナ(松たか子)
    カンナは複雑な心境を抱えた主人公です。
    夫を失った悲しみ、過去に戻って関係をやり直したい気持ち、そして若き日の夫との新たな恋。松たか子さんの演技が、カンナの葛藤をリアルに表現していて、思わず共感してしまいました。
  • 硯駈(松村北斗)
    若き日の駈を演じる松村北斗さんの演技が素晴らしかったです。カンナとの出会いのたびに「初めて」の恋に落ちる様子が、とても爽やかで魅力的でした。特に、カンナの正体を知った後の駈の反応には胸を打たれました。
  • 天馬里津(吉岡里帆)
    カルテットでも素晴らしい演技をしてくれた吉岡さん、期待以上でした。坂本ワールドにぴったりハマります。夫を亡くしたカンナにわざわざ嫌味を言いに来るシーンも、こいつだったら言いかねない「嫌な女」感がプンプン漂います。そして30代でもとにかくかわいい、吉岡里帆はすごい。
  • 世木杏里(森七菜)
    カンナとともに働く後輩で、恋愛相談に乗ってくれる美術スタッフです。メインのキャラクターではありませんが的確なアドバイス、松さん演じるカンナが変わったキャラクターなのでビシッと物申すところなどは良い味出してました。

「ファーストキス」には「カルテット」との共通点はあったか考える

わたしはドラマ「カルテット」の大ファンで、何度も繰り返し見ました。どちらも坂元裕二さんが脚本を手がけた作品なのでもっと通ずるものがあるかなという期待もあったのですが「ファーストキス」を観た感想としては、作品のテーマには違いを感じました。

「カルテット」は、主に人間関係や自己実現をテーマにしています。特に、趣味や価値観を共有できる他者との出会いと、その関係性の難しさに焦点を当てています。作品では、音楽を通じて集まった4人の大人たちの複雑な人間関係や、自分の「好き」を他者と共有することの難しさが描かれています。
それにドラマと映画では作品の時間も違いますので、カルテットは坂元裕二脚本の良さがより一層感じられる出来だったような。

一方、「ファーストキス」は時間と愛をテーマにした作品です。この映画では、タイムトラベルという要素を使って、夫婦関係や愛の本質、そして人生で最も大切なことを忘れがちな人間の性質を探求しています。

  1. 時間の扱い: 「ファーストキス」では時間がキーとなる要素であり、過去と現在を行き来することで物語が展開します。「カルテット」では、現在の人間関係に焦点が当てられています。
  2. 関係性の焦点: 「カルテット」が複数の人間関係を扱うのに対し、「ファーストキス」は主に夫婦関係に焦点を当てています。
  3. テーマの深さ: 「ファーストキス」では、愛する人の未来を救うための究極の選択など、より深い愛のテーマを扱っています。
  4. ジャンル: 「カルテット」が日常的な人間ドラマであるのに対し、「ファーストキス」はSFの要素を取り入れたラブストーリーとなっています。

両作品とも、坂元裕二さん特有の繊細な会話劇や日常の中に潜む宝物のような瞬間を捉える手法は共通していますが、テーマの中心は大きく異なっています。個人的な感想としては「カルテット」は超えなかったけど、2時間の映画作品としてはしっかり含みもあって良い作品だったと思います。

「過程」と「結末」の多様な解釈の可能性

「ファーストキス」は、視聴者それぞれの経験や立場によって異なる解釈ができる奥深さを持っています。既婚者、独身者、大切な人を失った経験のある人など、それぞれが自分の人生に照らし合わせて物語を理解できる点も、この作品の普遍性を高めています。

どちらかというとタイムトラベルものとしては「まどマギ」「君の名は」の巧みさには負けると思います。でも多分そもそも「タイムトラベルもの」の土俵で戦おうとしていないシナリオなんですね。
「ファーストキス」は、タイムトラベルというファンタジー要素を巧みに用いながら、人間関係、人生の選択、そして日常の大切さという誰もが共感できるテーマを描いているため、普遍的な物語として多くの人々の心に響くのかもしれません。

普段時間を共にしている家族や恋人、友人との時間をより一層大切にするきっかけになる良い映画でした。機会があれば上映終了までにもう一度観に行きたいと思います!

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